「図説」GPS

序文より

 

 

GPSの登場により位置の決定は大きく変わった。 従来、地球上における位置は、測距儀による距離観測、あるいはトランシットによる角度観測を行うことで決定された。 観測はすべて観測点における水平面あるいは鉛直線方向に基づいて行なわれ、また測距儀が届く範囲、あるいはトランシットで見えるある限定した範囲でしか行なえなかった。 GPSはこれらの束縛を一気に取り除いた。 GPS衛星を介した観測により、観測点の位置を観測点での重力場(水平面あるいは鉛直線方向)に関係なく、また限定された地域ではなく大陸を越えてグローバルに位置が決定できるようになったのである。 これは位置決定の歴史における革命的な変化である。  

今日GPSは、地上あるいは宇宙空間においても最良の位置決定手段として広く用いられている。 その測位の簡便さからカーナビゲーションや携帯電話に組み込まれた個人ナビに、またその測位精度の高さから様々な測量や地殻変動検出等の科学的研究に利用されている。 日本はこのGPSの巨大ユーザーである。 カーナビ車の出荷台数は累計2000万台を越えている。 また日本の国土の隅々には電子基準点と呼ばれる常設のGPS観測点が千数百点設置されている。 電子基準点は位置に関する国家基準点として機能している。 この電子基準点データを利用して全国どこでもリアルタイムにセンチレベルで測位が可能なシステムも現在構築されており、それに基づく測位サービスが行なわれている。 このように日本において測位の根幹をなすGPSであるが、現在大部分のGPSユーザーにとってGPSはブラックボックスである。 カーナビや個人ナビユーザーにとってはそれでもよいが、測量や精密測位に携わる技術者には、その測位原理を学び、何故位置が求まるのか、求まる位置座標はどのようなものなのかについて理解しておくことは不可欠のことであろう。 本書はこのような精密測位、測量に関係する人にGPSの測位原理を出来るだけ分りやすく解説するものである。 全編各テーマごとに文章と図表の見開きの頁で説明するという構成としたのもその理解を容易にするためである。

 


発行:日本測量協会
ISBN:978-4-88941-015-0

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