GNSSのすべて



訳者あとがき から 
 

 

GPS theory and practice」は1992年に初版が出て以来、GPSのテキストとしてベストセラーを続け、欧米の測地学や測量、ジオマティックスを教える大学でのテキストとしても使われてきた。 2000年に第5版が出版された後これは、2005年にシュプリンガー・フェアラーク東京株式会社から日本語での翻訳出版が行われた。 訳者の係わった「GPS理論と応用」である。 日本語で書かれた大学レベルの標準的なGPSテキストがなかっただけにこの翻訳には好評を頂いた。

今回の「GNSSのすべて」は、これの大幅な改訂版という位置づけになろう。 2000年以降米国は、新たなGPS政策を発表し、GPS近代化政策を推し進めている。 ロシアは、1時期使えなくなっていたグロナスを復活させ数年後の完全運用へと動いている。 欧州はガリレオ計画を推進し、現在2機の実験衛星を打ち上げ、2010年代半ばの完全運用を目指している。 また経済の台頭著しい中国やインドのGNSS計画も発表されている。 まさにGNSSは、GPS1極だけではなくなりつつある。 これからはこれら様々なGNSSに対応することが求められよう。 

本テキストは、このような状況を考慮して作られたものであると言えよう。 全体の構成を大きく2つに分け、前半ですべてのGNSSに共通の測位理論を説明し、後半で個別具体のGNSSの解説を行っている。 測位理論では仮想基準点や精密単独測位(PPP)といった新しい理論も加えている。 また電波信号についての解説も充実させており、その基礎から最新のBOC変調まで取り込んだ構成になっている。 これらは「GPS理論と応用」にはなかったところである。

後半の個別のGNSSシステムについては現在入手出来る範囲の最新情報が盛り込まれており、GNSSのすべてという内容になっている。

このように本書はGNSSに関するこれからの標準テキストとなるに相応しい内容になっていると訳しながら強く感じた次第である。 本訳により日本において多少なりともGNSSについての理解が増せば、訳者の望外の喜びである。

発行:古今書院
ISBN:978-4-7722-2008-8

 


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