「図説」測地学の基礎

序文より

 

測地学は「地球の形」と大きさを求める学問である。 地球についてのイメージはその時点での測地学の水準を反映している。 地球をほぼ球形と認識していた古代から、扁平な楕円体と捉えていたニュートンの時代、人工衛星による観測による西洋梨型の地球を経て、現在では、より詳細な「地球の形」が明らかになってきている。 測地学では、地球重力場の決定と地球上の位置の決定を両輪にして研究が進められてきた。 重力場の研究からはガウスの提唱した「地球の形」、ジオイドが求められる。 一方地球表面の位置を決定し、地表面の正確な地図を作り上げることにより、地表面地形としての「地球の形」を求めることが出来る。 特にこの分野では20世紀後半のGPSの登場により革命的な変化が生じた。 それまでは地表面の形はある限られた地域での相対的な位置関係を地図に表すことしか出来なかったが、GPSの登場により、大陸をまたいでグローバルな地表面の位置関係がセンチレベルで議論できるようになった。 このレベルになると、月、太陽による潮汐力や地殻変動等様々な要因によって地表面が変動していることも分かる。 これは仮に地表面をGPSアンテナで被いつくせば、変動する「地球の形」もセンチレベルで捕らえ追跡できることができるということである。

本書はこのような最近の測地学の状況のなかで、地球上での位置の決定ということに焦点をあてて測地学の基礎を解説したものである。 ただ地球上での位置決定と言っても、それは単に幾何学的なものではなく、地球重力場の決定と不可分の物理的な側面も持っている。これは座標系の構築やGPSの軌道決定、あるいは標高の決定等様々な場面で現れる。 本書ではこの地球上での位置決定の原理をできるだけ分かりやすく説明することを試みている。 そのため各テーマ毎に左頁に説明文、右頁に図表を配置し、この見開きの頁で完結するようにした。 第1章では測量で用いられる様々な座標系とその変換について記述した。 第2章では位置決定の原理を古典的な手法とGPS測位それぞれの場合について記述した。 第3章では位置の計算処理に欠かせない最小二乗推定とそのための観測方程式について記述した。これは特に観測量と求める位置との関係が分かりにくいGPS測位の場合には本質的に重要になる。 第4章は地球重力場の入門である。ジオイドの決定や標高という重力とは不可分な高さ位置について記述した。

 

発行:日本測量協会

ISBN:978-4-88941-013-6 

 

 home