観測と最小二乗法

序文より

 

 

本書は、最小二乗法についての入門書である。 最小二乗法についてその理論的背景から実際の計算例まで取り扱っている。 

類書のあるなかで本書の特徴をあげるとすれば、1)観測量と未知量の関係を示す数学モデル毎に定式化を行い全体像を分かりやすくしたこと、2)行列による表記で一貫した定式化を行ったこと、3)最小二乗計算の精度評価・検定について重点をおいたこと、4)実際の計算例で問題の設定から計算、評価まで詳しく説明したこと、であろうか。 特に精度評価や統計的な検定については詳しく説明している。

第一章では観測値のもつ統計的な性質と、そこから導かれる最小二乗法の原理ならびに最小二乗推定について述べている。 第二章では最小二乗推定を分類、定式化して説明している。 第三章では最小二乗推定の精度を数学モデル毎に示すと同時に、その評価・検定手法について説明している。 第四章では、具体例による数値計算を通して、問題設定から計算、評価にいたるまで最小二乗計算のすべての流れが分かるように説明している。 

 最小二乗法は、およそ観測が行われその観測値を処理する場合には、どのような観測に対しても適用できるが、あえて「測量・G空間データの解析」と副題をつけたのは、この分野は最小二乗計算が日常的に広く使われているため、多くの例題としてこの分野の観測例が選ばれていることによる。 この分野では、最近は電子的な測定により大量のデータが取得され同時に測定器内のコンピュータで最小二乗計算処理がリアルタイムで行われるようになっている。 GPSなどはその代表例である。 最小二乗法は、あらゆる観測データに対して適用できる手法であり、本書の記述、定式化は汎用性を備えたものである。本書はこの最小二乗法について学ぼうとする諸氏に多少なりとも見通しの良い解説が示せればとの思いで書いたものである。  本書により最小二乗法についての理解がいくらかでも深まれば幸いである。 

 

発行:技報堂出版
ISBN:978-4-7655-1765-2

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